【vol.4 亜鉛】その「偏食」、実は亜鉛不足かも?

ママ管理栄養士による「こども栄養学」

「うちの子、食べられるものが本当に少なくて……」お子さんの好き嫌いや偏食に悩みを抱えているご家庭は、決して少なくありません。

実は、その"食べない"の裏に、ある栄養素の不足が隠れていることがあるのをご存知でしょうか。今回は、子どもの成長と味覚を静かに支える栄養素、亜鉛のお話です。

【保護者の方からのご相談】

幼稚園の年長になる娘がいるのですが、食べられるものが本当に限られていて…。嫌がらずにスッと食べてくれるものといえば、白いごはんとうどん、あとはフライドポテトくらい。お肉もお魚も、一口食べて「いらない!」と言われてしまいます。偏食の域を超えている気がして、栄養が足りているのか心配です。
(30代・母/大阪府・幼稚園年長さんの保護者)

お子さんの好き嫌いや偏食についてのお悩みは、小さいお子さんをお持ちの保護者の方から本当によくお聞きします。このお悩みを、ご自身も一児の母である管理栄養士の宮﨑奈津季先生と一緒に考えていきます。

【このお悩みは、一児の母でもある管理栄養士の宮﨑先生と一緒に考えます】

自身も子育てに奮闘中のママであり、食のプロフェッショナルでもある宮﨑先生。お母さんたちのリアルな不安に寄り添いながら、今日からできるアドバイスをお届けします。

管理栄養士 宮﨑奈津季先生

宮﨑 奈津季(管理栄養士/一児の母)

大学を卒業後、医療系食品メーカーで2年間営業に従事。その後独立し、記事執筆やレシピ開発、商品企画に携わる。会社立ち上げも経験。
現在はプロジェクトマネージャーとして、食や健康に関するコンテンツ制作や企画、ディレクションを担当している。その他、Webメディア編集や特定保健指導、講師業などをフリーランスとして幅広く活動中。

1. 亜鉛とは何か

亜鉛は、体内の200種類以上もの酵素に関与しているミネラルで、子どもの体では特に2つの大切な役割を担っています。

ひとつは、新しい細胞をつくる役割。たんぱく質やDNAの合成に関わり、細胞が新しく生まれ変わるのを支えています。体が日々つくり替えられていく成長期の子どもにとって、亜鉛は"成長そのものの材料"と言える栄養素です。

もうひとつは、味覚を保つ役割。舌には味を感じる「味蕾(みらい)」という細胞があり、これは新陳代謝がとても速い組織です。その入れ替わりに亜鉛が使われるため、亜鉛が足りないと、味を感じにくくなることがあります。

2. 子どもが亜鉛不足になると、どうなるのか

亜鉛不足は、子どもの体に思いのほか大きな影響を及ぼします。

成長の遅れ

小児の亜鉛不足は、身長や体重の伸び悩みにつながることが報告されています。細胞が新しく作られる勢いそのものが鈍ってしまうためです。

味覚の低下と、偏食の悪循環

味を感じにくくなると、食が細り、偏食が進みます。すると、亜鉛がますます不足する、という悪循環に陥りやすいのが、亜鉛不足で気をつけたい点です。「食べないから足りない」が、「足りないから食べない」に転じてしまうのです。

肌や、口などの粘膜への影響

亜鉛は皮膚や粘膜、免疫の状態に関わる栄養素として知られており、不足するとそれらに影響が出る可能性があります。
日本臨床栄養学会の『亜鉛欠乏症の診療指針2024』では、症状として現れていない場合も含め、少なくとも10~30%の日本人が亜鉛不足の状態にあると予想されています。

3. 1日にどれくらい摂るべき?──思春期は大人以上の摂取が必要

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、年齢別に1日の亜鉛推奨量を以下のように定めています。

年齢 男性(mg/日) 女性(mg/日)
1〜2歳 3.5 3.0
3〜5歳 4.0 3.5
6〜7歳 5.0 4.5
8〜9歳 5.5 5.5
10〜11歳 8.0 7.5
12〜14歳 8.5 8.5
15〜17歳 10.0 8.0
18〜29歳 9.0 7.5

注目していただきたいのは、15〜17歳の男子で1日10.0mgと、18~29歳の男性(9.0mg)を上回る量が示されている点です。10〜11歳で必要量がぐんと増えるのも特徴で、体が大きくつくり替えられる思春期は、人生の中で最も亜鉛を必要とする時期のひとつといえます。

4. 亜鉛はどんな食品に入っているのか

亜鉛を多く含む代表的な食品には、以下のようなものがあります。

  • 魚介類:牡蠣(特に豊富)、さば、うなぎ、しらす干し、ほたて
  • 肉類:牛の赤身肉、レバー
  • 卵・乳製品:卵、チーズ
  • 大豆・種実類:納豆、高野豆腐、ごま、カシューナッツ、アーモンド(※)
  • 穀類:小麦胚芽

※硬い豆やナッツ類は、のどや気管に詰まらせるおそれがあります。窒息や誤嚥(ごえん)を防ぐため、5歳以下のお子さまには与えないようご注意ください。

亜鉛は動物性食品に多く、吸収率も動物性のほうが高いとされています。植物性食品の亜鉛は吸収されにくいため、ビタミンCや動物性たんぱく質と組み合わせると効率よく摂ることが可能です。

5. 「食事だけで足りる?」──現代の子どもの食生活

亜鉛は、現代の食生活で摂取するためには、工夫が必要な栄養素のひとつです。理由は主に3つあります。

加工食品・インスタント食品への偏り

これらを中心とした食生活は、そもそも亜鉛が少なめです。加えて、一部の食品添加物(ポリリン酸など)が亜鉛の吸収を妨げることが知られています。

肉・魚を食べない偏食

亜鉛の主な供給源は動物性食品です。偏食で肉や魚を避けると亜鉛が届きにくく、味覚の低下と重なると、先ほどの悪循環に入り込んでしまいます。

精製・加工で失われやすい

亜鉛は穀物の胚芽部分に多く含まれるため、精製された白い主食が中心の食卓では摂りにくくなります。

きちんと食べさせているつもりでも、現代の食卓には亜鉛が不足しやすい構造があるのです。

▼ 宮﨑先生からのメッセージ▼

偏食のご相談は、栄養指導の場で本当に多くいただきます。私自身、娘が2歳を過ぎた頃から偏食が始まり、徐々に食べられるものが少なくなってきた時は気が滅入ってしまうこともありました。

「どうにか出したものは食べてもらわないと!」と躍起になっていろいろ工夫をしたり、声がけをしてきましたが、しんどくなってしまうこともしばしば。そこからは、少しの量でもなんとか口に入れてもらい、とにかく、ちょっとずつでも「継続して食べてもらうこと」に重きを置くようにしました。よく食べてくれる唐揚げにごまを少し振ってみたり、ごはんやトーストにしらす干しを少しかけてみたり。ほんの少しでも、続けることに意味があります。肩の力を抜いて、できる工夫から始めてみてください。


▼ さらに深掘り!亜鉛の「よくある質問」 ▼

Q. 亜鉛の吸収を良くする食べ合わせは?

A. ビタミンC(柑橘類やブロッコリーなど)やクエン酸(梅干しやお酢)、またお肉やお魚などの動物性たんぱく質と一緒に摂るのがおすすめです!植物性食品に含まれる吸収されにくい亜鉛も、これらと組み合わせることで体への吸収率がグンと高まります。

Q. 逆に、亜鉛と一緒に食べないほうがいいものは?

A. インスタント食品やスナック菓子などの加工食品に含まれる一部の食品添加物(ポリリン酸など)は、亜鉛と結びついて吸収を妨げてしまいます。また、体に良いとされる食物繊維も、極端に摂りすぎると亜鉛の吸収を妨げ、体の外に排出されやすくなることがあります。加工食品に偏りすぎないよう気をつけつつ、バランスよく食べるのが一番のポイントです。

【参考文献・出典】
・厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
・日本臨床栄養学会『亜鉛欠乏症の診療指針2024』
・文部科学省『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』


次回のテーマ

次回は、免疫や肌、そして鉄の吸収も支える身近な栄養素、「ビタミンC」のお話をお届けします。

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